遺言1
1.遺言に関する総則
(1)遺言の要式性
遺言は要式行為(一定の様式に従わないと不成立又は無効とされる法律行為)です。これは、死亡者の意思の真否や内容について、本人に確かめることが不可能であるため、一定の手続きに従った遺言書の作成を要求することで、死亡者の真意を確保するものだからです。
(2)遺言能力
満15歳に達した者は、遺言をすることが出来ます。これは、通常の行為能力より低い程度の意思能力があれば遺言能力があると考えられているからです。
なお、遺言が有効に成立した後に、遺言者が能力を失っても、遺言の効力は失われません。
(3)包括遺贈と解く手遺贈
遺贈とは、遺言によって受遺者に対し財産的な利益を与えることです。遺言の性質から、遺言が効力を生ずれば、受遺者の承諾の有無にかかわりなく財産処分としての効力が生じます(受遺者は放棄も出来ます)。
なお、死因贈与も、死後の財産処分に関係し、かつ、贈与者の死亡を効力発生要件とする点で遺贈と共通しますが、真贈与は贈与契約であるのに対して、遺贈は単独行為であることが相違します。
遺留分を侵害した遺贈は、遺留分権者から減殺請求があればそれに服することとなります。
2.遺言の方式
(1)自筆証書遺言
遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押す方式で、遺言者がすべての部分を自書する必要があります。自筆証書の加除その他の変更については、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記した上、特にこれに署名し、その変更の場所に印を押さなければなりません。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、「公証人」が遺言者から遺言の趣旨の口述をもとに遺言書を作成し、その遺言書の原本を公証人が保管するという最も「安全」「確実」な遺言書です。
遺言者は、遺言者が選んだ証人2人以上を立会人として、公証人の面前で口述します。
公証人は遺言者が口頭で述べた遺言の内容を正確に文章化し、遺言者と証人が確認した後、遺言者、証人、公証人が署名・押印すれば公正証書遺言が完成します。
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の存在は明確にしつつも、その内容については秘密にできる遺言です。まず、遺言書を作成し、封印、証人二人とともに公証人の面前で、自分の遺言書である旨等を申述します。しかし、内容については公証人が関与しないため、法定内容について争いになる可能性もあります。